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最近、知り合いの方から刀があるのだが、どうしたらよいかと相談を受けた。 取り合えず拝見すると、拵えに入ったもの、白鞘のものまであったが、共通することは刀身には錆があちこちに見え、茎は錆がひどく、ざらざらと柄を抜くときに錆の音がするほどであった。
よほど保存状態が悪かったものと思え、保存場所の問題や手入れの問題と両方の状態が悪かったと推察された。 また、一部は登録証が無いものがあり、厳密にいえば、無いというよりも、どこにあるのかが不明となっていた。 一部は鞘にセロハンテープで張り付けてあるものや、紐で縛ってあるものもあったが、管理状態がばらばらであるので、盗難防止のために刀と刀剣登録を別々に保管していたという訳ではなさそうだった。
登録証の無いものは地元の都道府県の教育委員会へ相談して、手続きを進めるように進言した。手入れの悪いものは、これ以上の状態悪化を招かないように、とりあえずの手入れをした。
問題は相続人である本人に今後、所有の意思があるかどうかである。 所有の意思がないないなら、登録証があるものは、ネットオークションや刀剣商を通じて処分できるであろう。 また、登録証が不明な場合は、もう不要なら警察へ相談に行って、警察で処分してもらうことになろう。
なんだか、刀の相続の話をしながら、ふと思ったことだが、家だって土地だって、車や時計、手入れをしないで手間暇をかけずに相続できるものなんて実はないんだと思った。もっとも最高の状態で相続するには、日ごろの手入れと知識の移譲も必要で、その対象物を続けて守ることの意思がなければ、どようなものも同じだ。何も刀に限ったことではない。
最近は、断捨離ブームで何もかも歳が来たら、売り払うことを主な手段として処分してしまうことが多いと聞く。 刀は譲り受けたか、相続により所有することになったかのどちらかで、登録の変更届をだすことになっているが、価値ある刀剣を次の世代に残すためには、高額評価の物ほど、相続問題(税金)や文化財保護の観点からの問題を抱えていると思う。
錆びついた状態で拝見するのは刀身の部分だけではなく、ざらざらと音を立てて柄から出てくる茎でもあり、錆ついた茎に覗く銘が見えると、余計に寂しさを覚える。
人口減少の陰で、世代ことに家を建てるために、実家の相続や建物そのものの手入れもそのままに、朽ちてしまいかねない文化財の存在がある。 一振りの刀を見て、そういう思いに駆られた次第。 |
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