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江戸時代初期の物語に浅井了意『伽婢子』(とぎぼうこ・おとぎぼうこ)があります。室町物語と元禄時代に現れる江戸の「浮世草子」の中間に置かれる物語で、作者の浅井了意は中国文学にも通じた僧侶で、唐・宋・明の怪異小説を日本の物語に置き換えた多数の物語が含まれています。伽婢子とは幼児用の人形のことです。
その中に「幽霊諸将を論ず」という作品があり、甲斐国恵林寺の精霊会の夜に山本勘助、直江山城守などの名軍師の霊が現れて戦国時代の合戦を論じるという物語があります。中国の「剪灯新話」に五代から唐時代の豪傑の霊が談論する話の翻訳だそうですが、話を終えて冥界に戻る諸将が漢詩を読み、山本勘助は
「平世ノ知略、胸中ニ満チ。剣は秋霜ヲ払ヒ気ハ虹ヲ吐ク。 身後何ゾ濫(みだり)ニ興廃ヲ論ゼン。憐ムベシ怨恨ノ深窓ニ嘯(うそぶ)クヲ。」
まあ、史実でなく浅井了意の創作でしょうが、他の豪傑たちの漢詩と違い剣が出てくるのがヤマカンらしいと思いました。
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